2008年06月06日
第1部 レースレポート(前編)
悪夢で始まった王者のレース
5月24日午後1時15分。ピットのシグナルがグリーンに変わり、ウインドスクリーンに『グランツーリスモ』のステッカーを貼ったマシンが、1台、また1台とコース上に押し出されていきます。雨は降っていないものの全天を雲が覆う微妙な天候。各チームはタイヤチョイスに悩んでいる模様で、グリッドについてからもタイヤ交換に追われる姿があちこちで見られます。
14時40分。220台のマシンを3つのグループに分けて、フォーメーションラップが始まりました。ところがこのフォーメーションラップ中に早くも異変が生じます。磐石と見られていたマンタイポルシェがテールエンドから白煙を上げ始めたのです。冷却水のトラブルです。 今年からフォーメーションラップ中のコースへの立ち入りが禁止されたため、観客がドライバーと直接タッチをかわしていく光景は見られません。代わりに観客はガードレースや金網に張り付きながら、エアホーンの嵐でマンタイポルシェを激励します。
そのマンタイがあえぐようにピットロードに飛び込んだところでシグナルがグリーンに。王者にとって悪夢のようなスタートとなりました。しかしマンタイはこのトラブルにわずか15分で対処を施し、15時16分、ポルシェ911RSRを再びコースへと送り返します。この時点でポジションは180位以下。王者の怒涛の追い上げが始まります。
序盤の混乱は他チームにも襲い掛かりました。15時11分、フレンツェンの駆るアポロが突如スローダウン。デファレンシャルが破損したようです。なんとかピットに戻ったものの、マシンはそのままピット内にしまいこまれ、復帰までに3時間を要することとなります。
15時25分。ザクスピードバイパーの電気系にトラブルが発生し緊急ピットイン。オルタネータを交換して再スタートしましたが順位を大きく落としてしまいました。さらに16時、レクサスLF-Aがギアボックスからオイル漏れを起こしピットに入れられます。
こうした他車のピットインを受けてファルケンのZ33は22位にポジションをアップ。フォルクスワーゲン・シロッコも117号車が23位、118号車が24位と好ポジションにつけています。LF-Aがそれに続く25位、インプレッサも51位と大きくジャンプアップを果たしました。
インプレッサに異変発生!
スタート後の混戦が一段落してもコース上には思い出したように雨が降り、ドライバーは困難なドライビングを強いられています。
しかし復調したマンタイポルシェの猛追はすさまじく、レース開始1時間後に164位だったポジションをわずか2時間で16位にまで上げ、さらに前走車を激しくプッシュしています。
トップ集団の中でペースが速いのはモータースポーツ・アリーナチームのZ4Mクーペ(♯5)。スタート後5時間で一時トップに立ちますが、その後ハイザックコンペティションのポルシェ911とのバトルに破れ、再び順位を落としてしまいました。
そんな中、圧倒的な燃費性能で急上昇しているのが、WTCCドライバーの駆るBMW320d(♯261/S1)。第3グループ先頭(152位)からスタートして1時間後には52位、3時間後には26位、5時間後には12位とひと桁圏内へ入ってきました。BMWは2006年に同じエンジンを積む120dが総合5位を獲得しており、目が離せません。 いっぽう合計4台が出場したアストンマーチンは、7位スタートを切った6号車が一時4位に立ちましたが、ピットインのミスなどから徐々に順位を落とし、切れ味に欠ける展開となっています。
スタートから3時間55分後、オールジャパンで挑むインプレッサに異変が起きました。マシンがピットに帰ってきません。どうやら燃料切れのようです。万事休すと思われましたがオフィシャルの牽引でピットに戻れると無線が入り、チームには安堵の空気が戻りました。しかしこの復帰までにインプレッサは約40分という貴重なタイムをロスし、順位を147位まで落としてしまいます。 ファルケンZは順調にレースを消化し5時間経過後も22位をキープ。レクサスLF-Aは本来のパフォーマンスがなかなか取り戻せず、頻繁なピットインを繰り返しています。
圧倒的な強さを見せ始める“耐久の王者”
レーススタートから6時間が過ぎるとニュルの緑は茜色に染まり始め、やがて東の空から漆黒の闇が降りてきます。各車のHIDライトがひときわ輝きを増すようになると、いよいよナイトセッションの始まりです。 今回の24時間レースで改めて思い知らされたのは、ポルシェ911勢の戦闘力でした。昨年はケイマンが4位に入賞し、ポルシェに新時代が到来したことを予感させられましたが、今年は再び911の天下が復活した感があります。あたりがすっかり暗くなるころには911によるトップ集団が形作られ、トップ10中8台を911が占めるという状況。グループCカー時代に築いた“耐久の王者”の名は、まったく衰えていません。
夜になると、それまで降ったりやんだりだった雨がやや強まり、小雨のウェットレースの展開を呈してきました。ピット上はレインタイヤ交換に駆け込むマシンでラッシュアワーのよう。コース上ではあちこちでアクシデントが発生しています。 トップチームでは、モータースポーツ・アリーナチームのZ4 Mクーペがアクシデントの餌食となりました。3位を走行していたZ4はスタート直後のハッツェンバッハでスピン。マシンにダメージを受けてそのままリタイヤを喫しました。続いて午前0時過ぎには、18位まで復帰していたかつての王者、ザクスピードバイパーも悲劇に襲われます。ギャラリーコーナー手前でスピンを喫しガードレールに激突。彼らの2008年のレースがこの瞬間終わりました。
こんな修羅場の中を、奇跡的なオーバーテイクを見せて見事トップに返り咲いたのが、マンタイレーシングです。一時はライバルよりも20秒以上速いタイムでラップしたこのモンスターは、この時点から他車を引き離しにかかります。 日本勢の2台も試練をうまく切り抜けました。ファルケンZはウェット路面を堅実に走って夜10時には17位までポジションをアップ、さらに朝4時には13位にまで順位を進めます。インプレッサもAWDシステムが真価を発揮して安定した走りを見せ、午前0時に138位、明け方の午前4時には98位まで順位を戻しました。服部、松田(晃)というニュル初体験の2選手もうまく自分の役割を果たしています。 一方LF-Aは170位付近と精彩を欠いていましたが、午前1時40分、シュバルベンシュバンツ付近でメカニカルトラブルが発生し再びピット内に消えました。
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